事例紹介
INTERVIEW
コムパックシステム株式会社
会社を立て直すため、環境経営へと舵切り。社内にPDCA※を根付かせ、業務改革と社員のモチベーションアップを実現。
2024年3月21日
上田市秋和で、総合包装企業として事業を展開するコムパックシステム株式会社。環境省が定めた環境経営システムに関する第三者認証・登録制度「エコアクション21」を2008年に取得し、10年で約3割の二酸化炭素排出量削減を達成しました。代表取締役社長である鈴木由彦(すずき よしひこ)さんに、具体的な取組やその背景についてお話を伺いました。*以下敬称略。
※PDCA…Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(見直し・改善)の4段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善する手法。
会社を変えるため「エコアクション21」への取組を開始
まずは、SDGsを意識して取組を始めた背景について教えていただけますか?
鈴木:最初のきっかけはリーマンショックでした。日本中の企業が苦しむ中、コムパックシステムも売上が激減し、一時は会社存続が危ぶまれる状況まで追い込まれました。状況を打開すべく、今の延長線上ではない打ち手を模索するなか、目をつけたのは環境省が定める「エコアクション21」でした。中小企業が取り組みやすい内容で、我々でもできそうだと感じました。
魅力的だったのは、PDCAを回す習慣が身に付けられることです。エコアクション21の認証を受けるには、月単位で計画を立て、PDCAを回しながら目標達成を目指す必要があります。取組をある程度続けることで、会社に新しい考え方をインストールし、定着させられるのではと考えたのです。
リーマンショックまでの我々は、良くも悪くも、決まった仕事をしっかり続けていれば事業が成り立っていました。しかし、需要が落ち込む状況では、新しい動きを仕掛けなければなりません。PDCAは、我々にとって重要な考え方になりうると思いましたね。エコアクション21を、会社を変えるきっかけにしたいと思ったのです。
また、大変な時期でしたが、少しずつでも成長している感覚や前に進んでいる感覚を味わってもらうことで、社員のモチベーションアップにもつなげられればという狙いもありましたね。すぐに認証取得のための準備を始め、2008年には最初の認証取得を行い、以来現在まで取組を続けています。
数値目標を立て、PDCAを回しながら達成を目指す
それでは、現在の取組について具体的に教えてください。
鈴木:環境経営に関連するこれまでの取組は、会社で定期発行している「環境経営レポート」にまとめています。
具体的な数値目標についても、同レポートにまとめています。二酸化炭素排出量の削減、産業廃棄物排出量の削減等、大きく8つの分野に分類し、各分野でさらに細かい項目を設け、それぞれに数値目標を設定しています。
特に力を入れている項目はありますか?
鈴木:もちろん、全ての項目を達成させるつもりで取り組んでいますが、特に地域貢献につながる取組は大事にしています。
例えば、本社を構える長野県上田市、近隣の東御市、青木村と「災害時における物資供給の協力に関する協定」を締結しています。万が一、自然災害等により被災された方が出た場合、負担軽減のために環境にも優しいダンボールベッドの供給を行う予定です。あわせて、新型コロナウイルス等による感染症からの二次被害を防止するための間仕切りも提供します。
地域に根ざした取組により、自治体職員や学生さん等、普段の業務では接点のなかった方々と交流ができ、セミナーや講演会等に呼んでいただける機会も増えました。コムパックシステムは地域の方々のおかげで成り立っておりますので、地域貢献は義務だと捉えています。今後も、力を入れて取り組み続けたいです。
環境に配慮した包装設計が他社との差別化に
ここまでの取組を通して、何か手応えを感じていることがあれば教えてください。
鈴木:社内にPDCAを回すという仕事のやり方が定着したことが大きな成果だったと感じています。定着した考え方は、環境に対する取組だけでなく、普段の業務にも活かされており、自立して動く組織に生まれ変わるきっかけをつくることができました。
もちろん、環境に配慮した事業運営もできるようになっています。特に、商品開発の方向性は変わりました。環境に配慮した包装に関する意識が、開発メンバーたちの中に根付いていることを感じます。今でこそ、環境配慮設計は世の中で当たり前になりつつありますが、10年以上前から高い意識を持って開発設計ができていました。
開発力の向上に伴い、年に一回開催される日本最大のパッケージのコンテストへの応募も始めました。出場することで、少しでもPRにつながればと考えていたのです。実際に、我々の環境配慮設計は、2013年の入賞を皮切りに何度も賞をいただきました。おかげで社員のモチベーションが上がり、会社の雰囲気も良くなりました。また、他社との差別化にもつながっています。
会社の業績にも良い影響はあったのでしょうか?
鈴木:収益力は間違いなく高まったと感じています。その大きな要因は商品に付加価値をつけることで競争力が上がったことです。
包装業界では、他社とまったく同じ機能の商品を主軸にする場合、どれだけコストを下げられるのかという価格競争に陥ります。そうなると、大手に勝てるはずはありません。我々のような中小企業は、いかに他社ではつくれないオンリーワンの商品を提案できるかが重要です。環境への取り組みを続けることで新商品が生まれ、その商品を地元の新聞をはじめ報道いただいたことで知名度が上がり、声をかけてもらえる機会も増えました。
また、採用面でも好影響がありました。積極的に自社の活動を発信し続けることで、社会に貢献している企業だと思ってもらえる機会が増え、その結果、地元のために働きたいと考えている若者の応募が増えましたね。
社会課題解決に取り組む企業として、地域から認められる存在に
では最後に、今後の展望について教えてください。
鈴木:引き続き「エコアクション21」には取り組み続けるつもりです。また、2019年には、より一層SDGsへの取組を明確化し、経営課題へ盛り込むことを進めるため「ビジョン2030」を制定しました。あわせて、経営理念もSDGs達成に向けて一部改訂しています。社会課題解決に貢献すべく、さらに取組を加速させ、地域から認められる企業になれればと思っています。
また、包装以外の分野にも挑戦しています。例えば、リハビリテーション工学に精通した公立大学法人長野大学の社会福祉学部長の繁成剛教授と共同で、強化ダンボール製バランス感覚遊具「ナッツロール」を開発しました。昨年販売を開始し、上田市のふるさと納税の返礼品としても登録されています。現在は次の商品開発に共同で取り組んでいます。
さらに、これまで以上に新しいつながりづくりにも力を入れたいです。そのために企業や自治体、学校との連携を強化していくつもりです。新しいつながりは刺激を生み出し、次のアイディアの種になります。我々も自社のノウハウを提供し、一社ではできない社会課題解決に、仲間と一緒にチャレンジしていければと思っています。
コムパックシステム株式会社
昭和25年、長野県上田市において旧専売公社(現:日本たばこ産業株式会社)上田工場構内の輸送用木箱納入業者として創業。現在は、地域で生産される各種機械・工業製品や食品・雑貨などあらゆる業種の商品を日本のみならず世界各国へ輸送するための包装資材各種を製作する。特に、日本を代表する農業県である長野県で収穫される野菜や果実など青果物商品を梱包・輸送するダンボール製作は主力事業であり、地域に根ざした事業展開を行う。