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南信州広域タクシー有限会社

エコドライブ、クリーンエネルギー活用によりCO2排出量を削減。地域から選ばれるタクシー会社であるために。

2024年3月21日

飯田市上殿岡で、旅客運送業を営む南信州広域タクシー有限会社。「お客様の笑顔の為に」という企業理念のもとタクシーや貸切バスを提供する同社は、CO2排出量削減をはじめ様々な取組に力を入れてきました。その結果として、環境保全を目的にした取組を行う運輸事業者のための認証制度「グリーン経営」に15年連続で認証され、日々の取組が総合的に評価される「エコドライブ活動コンクール」においては最高賞に当たる「国土交通大臣賞」を受賞しています。代表取締役社長である鈴木佳史(すずき よしふみ)さんに、具体的な取組やその背景についてお話を伺いました。*以下敬称略。

環境モデル都市、長野県飯田市にふさわしい企業であるために

まずは、SDGsを意識して取組を始めた背景について教えていただけますか?

鈴木:実は弊社の場合、最初からSDGsを意識して活動を始めたわけではありません。もともと取り組んでいたことが、結果的にはSDGsにつながったというのが実情です。

我々はタクシー会社ですので、いわば24時間365日、公の道路を使わせていただきながら、CO2を排出して営業をしています。そのような事業形態だからこそ、環境への配慮を持たなければという意識は創業時からずっと持っていました。そうでなければ、地球環境を守ることもできませんし、地域の方々に選ばれるタクシー会社になることもできないと考えていたのです。

また、我々の環境への意識が高かった背景には、会社がある長野県飯田市からの影響も大きいと思っています。飯田市は、2007年に「環境文化都市宣言」を行い、全国に先駆けて「日々の生活から産業活動まですべての営みが自然と調和するまちづくり」に取り組んでいました。2009年には国が指定する環境モデル都市にも選ばれています。我々は、そのような飯田市に拠点を置く企業だからこそ、地球環境に配慮した事業運営をしなければと考えていましたね。

CO2削減を軸に、SDGsにつながる複数の取組を実施

それでは、現在の取組について具体的に教えてください。

鈴木:紹介しきれないほどたくさんありますが、SDGsの枠組みに沿ってお話しすると、大きく3つあります。

1つ目は、CO2排出量削減のための取組です。具体的にはエコドライブによる業務中の車両燃費向上、既存車両の低公害車・ハイブリッド車両・EV車両への入れ替えがあります。

特にエコドライブに関しては、公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団グリーン経営業務室が実施する「エコドライブ活動コンクール」において、最高賞に当たる「国土交通大臣賞」を受賞しました。エコドライブという名称ではありますが、運転技術だけでなく日々の取組も審査の対象であり、あらゆる取組を総合的に判断いただいた結果の受賞だととらえています。

本社にて充電中のEV車

2つ目は、社員構成比における女性比率の向上(女性ドライバーの採用)です。現在の女性社員比率は80名中8名の10%(2024年2月時点)ですが、2030年までには女性社員比率を20%に高めることを目標にしています。

3つ目は、太陽光発電によりCO2排出ゼロのエネルギーによるEVタクシーの運行です。2023年9月より、飯田まちづくり電力株式会社さまと「南信州ゼロカーボン電気」の電気需給契約を締結しており、再生可能エネルギーによる自家消費に加え、ゼロカーボン電力によるEVタクシーの給電を可能にしました。現在は、給電時も走行時もCO2排出ゼロの「ゼロエミッションタクシー」を飯田市乗合タクシー4路線で運行中です。

本社駐車スペースの屋根に敷かれた太陽光発電パネル

直接的なSDGsの取組からは外れますが、災害時にEV車を蓄電池として活用する「災害時における緊急輸送等に関する協定」を下伊那郡阿智村と締結しました。電気の供給が停止してしまった地域において、井戸水の汲み上げやスマホの充電などライフライン確保に役立ててもらえればと思っています。

災害時における電力供給に関する協定書調印式の様子。右は阿智村の熊谷秀樹村長

地域からの信頼性がアップ、求職者も増加

ここまでの取組を通して、何か手応えを感じていることがあれば教えてください。

鈴木:会社に対する信頼性が高まったと感じています。お客さまからはもちろん、地域の企業や自治体から頼ってもらえる機会が増えましたね。タクシー協会や同業他社から相談を受けるケースも増え、地元で選ばれる企業に徐々になりつつあるのかなと思います。

また、採用にも好影響が出ていると感じます。昨今、タクシー業界はどこも人材不足です。コロナをきっかけに多くのドライバーが退職し、そのまま戻ってきていないのです。そのような中、南信州広域タクシー有限会社は比較的順調にドライバーの方に集まっていただけています。

ご応募いただく方の中には、我々の活動を知ってくれている方も多く、特に若い世代は興味を持ってくださる方が多いです。昨年は、1年間で100名ほどの応募があり、その中から10名以上の方を採用させていただきました。

歩み続ける姿勢を示し、同じ志をもつ仲間を増やす

では最後に、今後の展望について教えてください。

鈴木:これまで続けてきた取組をやめないことが重要だと考えています。歩き続けるうちに次のヒントが生まれることも多く、満足してやめてしまったら、そこで終わりだからです。

具体的な取組としては、電気自動車の台数を増やす予定です。本当は、水素自動車を導入したいのですが、飯田市にはまだ水素燃料を給油できるステーションがありません。ステーションまで建設するには相当の資金が必要なため、やり方を考えなければと思っています。関わりのある企業や自治体と連携し、導入の道を模索しているところです。2030年までに、CO2排出量10%削減を目指しています。

これからも、自社の取組や、他との連携を増やすことで、環境問題に対する我々の姿勢を地域に示し続けたいです。その姿を通して、地域の他の企業や自治体が環境に対する取組のきっかけを生み出せればとも考えています。

周りから見ると、「変わったことをやっているな」と思われるかもしれません。それでも、見ている人は必ずいます。一見無茶に見えても、一歩ずつ前進する我々の姿を見てもらえれば、事情があって動けなかった方々も行動を起こしやすくなるはずです。そのようなムーブメントを地域に生み出すためにも、自分たちの取組をなるべく発信し続けながら、一歩ずつ歩んでいければと思っています。

南信州広域タクシー有限会社
平成12年に既存のタクシー会社6社が業務提携し、MKグループを結成。平成15年3月に業務統合を行い、同年9月に新会社として南信州広域タクシー有限会社を設立。長野県飯田市上殿岡にて旅客運送業を営む。タクシーや貸切バスでの輸送を軸に、デリバリーサービスや運転代行サービスなど新規サービスも多数展開中。従業員数は80名(2024年2月時点)。タクシーブランド名「アップルキャブ」は一般公募により決定した。

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