事例紹介
INTERVIEW
株式会社MAG・MAG
ビジネスパートナーとしてつながった“印刷”と”福祉”で、ソーシャルグッドな社会を
2022年3月14日
どんなことをしている企業ですか
広告事業を主力に、デザインコンサルティングやブランディング、ウェブデザイン、空間デザインなどを手掛けるデザイン会社です。
なかでも、シルクスクリーン事業は福祉施設との連携を図ることで、ウェルフェアトレード(福祉施設の人たちがつくる製品などを適正な価格で購入することで「働くことに生きがいと喜びを得て、自立できることを支援する仕組み」)の考えに基づいた地産地消の事業を展開しています。
また、企業や自治体に対する「補助事業を活用した企画・提案」も新たな取り組みとして始めています。最近では塩尻市と一緒に、環境省の「国立・国定公園の利用拠点の魅力創造による地域復興推進事業」や「エコツーリズムを通じた地域の魅力向上事業」、県が行う「地域発元気づくり支援金」を活用した旅行商品の造成から、プロモーションまで行っています。
当社の設立は2018年1月。今年で5年目を迎えました。社名の由来は磁石の「MAGNET」です。引き合う力と押す力、NとSの両極があること、それらをデザインの持つ「求心力・遠心力」や「導く力」、「客観性・主観性」に準えています。また「FAN to FUN(ファンとファン) 創り手の届けたいと貰い手の欲しいをデザインでつなぐ」を企業理念に、顧客ではなく当社のファンになっていただき、お互いを理解しつつ仕事を楽しんでやっていきたいと考え、気持ちや時間、空間などの日常に関わる全てを、より楽しく豊かなものにしていこうと日々取り組んでいます。
長野県SDGs推進企業に登録したきっかけを教えてください
当社は以前よりフェアトレード活動に関心を持っており、現在は特に、福祉施設と連携して行うウェルフェアトレードに取り組んでいます。
この仕組みは印刷業務だけではなく、他社の事業にも展開できる、参考にしていただけるのではないかと考えて登録しました。当社が登録することで、同じフィールドにいる多くの企業に発信したいという想いや、賛同していただける企業との出会いにも期待しています。
取り組まれている事業にはどのようなものがありますか
まず、SDGsアクションのきっかけは、「イベントでマルチバッグをノベルティとして配りたい」と取引企業から相談を受けたことでした。当初は低価格・短納期の外注先を利用しようと思いましたが、地元で使うものを県外や海外の企業に依頼することに違和感を覚えたのです。当社で展開しているシルクスクリーン印刷を活用すれば、地元での製作は可能です。地元でパートナーとして請け負ってくれるところを探すなかで、元々就労のボーダレス化(障がい者が制限なく就労できる社会の実現)に興味があったこともあり、丁寧な仕事で定評のある、障がい者福祉施設や就労施設にお願いしたいと思い至りました。
この想いを福祉施設に伝え、また発注元となる取引企業にはウェルフェアトレードに基づいたもので短納期・低価格は難しいなどの詳細を説明したところ、双方に協力いただけることになったのです。
シルクスクリーン印刷を通して、企業と福祉施設がビジネスパートナーとして取り組む第一歩を踏み出すことができました。我々としても、期待通りの丁寧な仕上がりはもちろん、利用者さんが楽しそうに、やりがいをもって作業していることを何よりも嬉しく思っております。そして、これが継続できれば、「仕事の地産地消」が成り立つことを実感しています。
企業は、その仕事を通して、“地域になくてはならない存在”になっていくべきと思っています。世の中にある様々な仕事において就労格差をなくし、身近な人達が幸せを感じながらお金も稼げる理想的な仕組みができないかと常々考えていました。そんな折に、福祉施設と“ボランティア的観点”ではなく“ビジネスパートナー”として連携し、地域に密着したビジネスの展開をすることができました。短納期・低価格での納品は叶いませんが、それに代わる大きな付加価値がプラスされたとも感じています。
シルクスクリーン印刷は、前述の通りウェルフェアトレードの考えに基づき行っています。印刷を扱うショップ「magtas FACTORY」は、現在5カ所の福祉施設と契約を結んでおり、既にイベント用Tシャツやノベルティ、記念グッズなどを手掛けています。
今後はどのような展開を考えていますか
今後は、SDGsがビジネスのコアになると考えています。仕事とはお金を生むだけではなく、人を雇用するだけでもない。総括的に考えたとき、いかにサステナブルかということが大切です。そのためにも、本業であるデザイン業のスケールアップを図っていきます。
そして2030年を目標に、シルクスクリーン事業を通して地域社会の連携と、ジェンダー・年齢の枠を超えた雇用創出の実現に邁進していく考えです。「magtas FACTORY」のシステムについては、これまでは取引先にSDGsの考えに共感いただきながらウェルフェアトレードを前面に出したB to Bでの展開をしていましたが、今後はB to Cも含め、“あなたのTシャツやバッグなどオリジナル商品を1枚から作れるプリントショップ”として位置付けていく考えです。これに付随してサイトも変更予定で、この事業はサイトの運営から地元の大学生などの若い世代に任せていこうと考えているところです。
また、この先は廃棄予定のアパレルメーカーの製品を調達し、アップサイクルできれば、とも考えています。こうしたビジネスを目指す当社が社会にどう映り、どんなインパクトが与えられるか、ということも指標の一つとしつつ、地域やこれからの社会を担っていく若者に認めてもらえる企業にしていきたいと思っています。
お客様の声
就労継続支援B型事業所 asoBe
施設長・サービス管理責任者 三浦 誉夫 様
就労継続支援とは、障がいを持つ方が一般企業での就業に不安や困難がある場合、その方の障がいや体調に合わせた就労の機会を提供したりその準備や訓練をしたり、仕事やその他の活動を通して知識や能力の向上を目指す事業所をいいます。雇用契約を結ぶA型と結ばないB型があり、当施設はB型事業所として軽作業的仕事で就業訓練を行っています。これまでの経験上、約7割が身内や関係者を通しての軽作業です。福祉現場ではラベル貼りなどの機械的な動きの仕事が多く、単価が安いので量をこなさねばならず、少し殺伐とした雰囲気にもなりかねない仕事がほとんどです。
そんななか、MAG・MAGさんからお話をいただきました。たまたまシルクスクリーン印刷の経験があったので、お引き受けしました。
シルクスクリーン印刷は、インクを載せて均等な力で刷らないといけません。失敗もあります。難しさを感じている方もいます。刷るのが苦手な方はアイロンがけや埃をとったり袋詰めなど、できることをお願いしています。しかし、利用者さんは自分がこうしたオリジナル商品を手掛けることができる楽しさを実感し、できた喜びが達成感につながっています。何回お仕事をいただいても1枚目ができあがると新鮮な気持ちになり、自然と皆さんから「おー」と歓喜の声が上がります。
これまではボランティア的発想での仕事、商品を買うのも身内でしたが、この仕事はビジネスとして成立しており、地域の方、社会の方とのつながりができたことは、印刷技術を習得できたという技術面だけでなく付加価値のあるものと感じています。
できたことの喜びがやがて慣れになってしまうこともありますが、仕上がりにも責任を持たねばなりません。丁寧さを忘れないよう指導していくのは職員の役目ですが、利用者さんも丁寧な仕事を心掛け、次の依頼を楽しみにしています。
株式会社MAG・MAG
長野県松本市県2番地2-34