事例紹介
INTERVIEW
株式会社若丸 / 有限会社ホテルニューステーション
“SDGs推進企業アクションプロジェクト” パートナーシップで県内企業のSDGs推進を支援
2022年3月17日
どんなことをしている企業ですか
下平(株式会社若丸):当社は、1919年(大正8年)に食肉販売業として創業しました。現在は馬刺し・馬肉を専門に製造・販売しており、インターネットを通じて全国に“信州の伝統食”を届けています。
飯島町にある本社工場では品質にこだわり、行政の基準よりも厳しくした自主基準を設けるなどして安心・安全な商品を目指すと共に、馬刺しは食べ切りサイズの真空パックにするなど、鮮度の維持や食品ロスにも配慮したこだわりの商品を提供しています。また、2021年4月には、本社工場に冷凍馬肉の自販機を全国で初めて導入し、365日24時間いつでも購入していただくことができるようになりました。
歩み続けて100年余、今後も地域の食文化を守り継承しながら様々な発信を続け、地域のブランディング化や日本の食文化として、馬刺し・馬肉を広めていきたいと考えています。
小林(有限会社ホテルニューステーション):当ホテルの前身は、材木問屋とその端材を使った銭湯です。1971年、松本駅前の区画整理の際、多くが旅館を開業する中、洋風のホテルとして営業を始めました。開業当時から大切にしてきたもののひとつに“3B(Bed and Bar and Breakfast)”があります。宿泊特化型ホテルというと、飲食をもたないテナントのホテルが多いのですが、当ホテルでは直営レストランとして、特に地元の食材、旬の食材を取り入れた朝食に力を入れてきました。また、バーは開かれた場所として、ご宿泊のお客様だけではなく、地域の方々にもご利用していただくことで、新しい出会いや交流の場につながっています。
今から20年ほど前には、いち早く7階の客室を大浴場に改装しました。今でこそ大浴場を備えたビジネスホテルは珍しくありませんが、当時としては新しい試みでした。大変珍しく、松本の風情漂う“巴の湯”は、多くの皆さまにとても親しまれています。また、インバウンド需要を見込んで、県外からのホテル進出がここ松本市でも盛んですが、コロナ禍でここ松本市でもホテルが供給過多になる中、価格競争に走るのではなく、 SDGsに取り組んでいることを積極的に発信し、差別化(企業価値の向上)も図っています。
今後も理念である“地域に根差したローカルホテル”としての役割を果たすべく、環境・社会・経済のあらゆる面で地域に貢献していきたいと考えています。
長野県SDGs推進企業に登録したきっかけを教えてください
下平:2020年に県の青年会議所(以下JC)のブロック会長になりました。会長として県全体のJCの事業を検討していた時、長野県のSDGs推進企業登録制度のことを知りました。長野県は他県に先駆けてSDGsを推進し、登録制度も整えたものの、まだ浸透していなかったことから、登録を推進する事業を行うことにしました。私自身、SDGsの基礎知識はありましたが、当時は当社も未登録の状態。しかし、活動を通してSDGsへの理解がより深まり、周囲へメリットを説明していくうちに、自社でもきちんと登録をしようと考えました。
登録したことで自社のビジネスとSDGsとの関連性を意識するようになり、できていることと取り組むべきことが明確になりました。例えば、当社の伝統的な「休憩時間95分」、「定年制なし」の制度はSDGsの「働きがい」につながることから継続していくこと、また、新たに地元中学生の職場体験を受け入れ、地域と関わることで従業員の満足感や充実感が得られ、考え方にも変化が見られるようになりました。登録を機に社員の理解が少しずつ進んでいたのです。そして、HPも作り直し、当社のSDGsの取組を発信するようになりました。
小林:私もJCに登録しており、外務省と日本青年会議所が2019年にSDGS 推進のための提携をしたことでSDGsを知り、理解を深めるために県の登録制度に登録しました。これまでも当ホテルはエコロジーや節約の意識で様々な取組を実施していましたので、SDGsは身近なアクションだと感じました。登録後は明確な目標をもち、取り組みの進捗を数値で確認するようになりました。
私のトップダウン的なスタートでしたが、今では食品ロス、アメニティや掃除の提供の仕方など従業員から見直しの提案がでるようになり、今は、スタッフに裁量を持たせています。 お客様には当ホテルのSDGsの取組を理解・共感していただけるよう発信し、次のご利用につながればと思っています。
長野県や楽天グループ株式会社との連携で“SDGs推進企業アクションプロジェクト”を立ち上げたようですが、その経緯と結果を教えてください
下平:立ち上げのきっかけは、私がSNSで県のSDGs登録制度に登録したことを発信したこと。仕事上お付き合いのある、楽天グループ株式会社のSDGs推進チームの方から連絡が入り、「SDGsをテーマにして会合を主催するので話をして欲しい」というものでした。
そこで当社が実践していること、中小企業がSDGsに取り組むメリットなどを紹介したことから話が拡がりました。楽天グループ株式会社は、県など自治体と連携を図りながらSDGsを推進していきたい意向があり、県との橋渡しのお手伝いをしたところ、一緒に何かやりましょうということになったのです。物販と旅行の2軸の取り組みにしたいとの希望でしたので、JCでもつながりがあり、同じくSDGsに取り組んでいるニューステーションさんを紹介して、一緒に”SDGs推進企業アクションプロジェクト”を立ち上げることになりました。
このプロジェクトで開催するセミナーの対象は、①県のSDGs推進企業に登録済み、あるいは予定がある企業、②ネットショッピングまたは宿泊施設を運営している、またはその予定がある企業、そして③SDGsの取組について同業者とコミュニケーションを取りたい企業とし、3日に分けて開催しました。
ネットショッピンググループは、2021年7月にDAY1をスタートさせました。金属加工、化粧品、食品、映像など15社程が集まりました。DAY1はSDGsの説明、取り組むメリットなどを説明し、DAY2に向けて目標を設定しました。DAY2は、目標達成に向けた意思表示、DAY3は宿泊施設グループと合同発表とし、8社程が発表をしました。
小林:宿泊施設グループは、9月スタートとなりました。楽天トラベルの施設全てに通知し、コロナ禍であっても積極的な8社にご参加いただきましたDAY1はSDGsの初歩的な説明を、DAY2は株式会社若丸さんをはじめ、各施設が取り組むSDGsの話を聞き、また、当ホテルの取組を見学してもらいました。DAY3は、ネットショッピングチームと合同の発表会を行いました。宿泊施設グループの発表は2施設のみでしたが、とても前向きな取組を提示していただきました。今回のプロジェクトについては、abn長野朝日放送のSDGsに関する番組内でも紹介されました。
SDGsのターゲットの中で、特に食品ロスは宿泊施設にとって大きな問題です。ひとつのまちに必ず複数の同業者はいるので、組合等、大きな単位で取り組むことができれば効果は上がります。業界全体で取り組めるような、大きなムーブメントが起こせればと思っています。 また、今回は異業種間での取組を聞くことでき勉強になりました。同業者にこだわらず真似できる点は取り入れていこうと思っています。
今後はどのような展開を考えていますか
下平:今回は事務局として、楽天グループ株式会社にサポートをしていただきました。我々は初めての取組で、手探りで学びながらの運営ではありましたが、とてもやりがいを感じましたし、多くのノウハウも得られました。SDGsという共通のテーマがあることで、異業種間でも分かりあえること、お互いにとって参考になること、そして実際にビジネスチャンスも感じる機会が多々ありました。今後も、今までにない異業種間での深いコミュニケーションを広げられるプロジェクトができれば面白いですね。参加企業の皆さんもモチベーションも上がって1歩踏み出せたのではないでしょうか。
また、新しい取組を計画している企業、SDGs実現に向けて施設を建設している企業もあります。これらが実現した際に、必要であればアドバイスもできるかと思っています。
下平・小林:今はプロジェクトが終わったばかりで次の計画は今のところありませんが、自社での取組を発信していくことはとても大事だと考えます。今後もSDGsをキーワードにコミュニケーションを深め、次のステップに活かせればと思っています。
(左)有限会社ホテルニューステーション 専務取締役 小林 篤史さん
株式会社若丸
長野県上伊那郡飯島町本郷2406番地148
有限会社ホテルニューステーション
長野県松本市中央1番地1-11