事例紹介

INTERVIEW

酒井産業株式会社

森と産地と人をつなぎ、森林の健全な循環に貢献したい

2022年3月17日

どんなことをしている企業ですか

国産材、特にヒノキ、スギ、サワラ、カラマツ、竹などの材を中心に加工された木竹生活用品の卸販売を行っています。提携工場は、家内工場から30名規模の工場まで全国150社に及び、各産地の材を利用し、材の特性に見合った用途の製品に加工します。取扱製品は、箸、器、まな板、飯切りなど卓上用品、調理道具、小家具から木のおもちゃ、木工工作キットまで1,500アイテムに及びます。

本社のある信州木曽谷は古くから林業が盛んで、地元木曽平沢は、漆器の下地に使われる良質な錆土が近くの沢から採れたことから、木曽谷の木材を素材に漆を塗り上げる漆器が地場産業として栄えました。当社の創業も1935年(昭和10年)に、この木曽漆器の行商から始まりました。現在4代目となりますが、初代は旅館などへの漆器行商、2代目3代目で業務用漆器卸と小売業を経て生活協同組合への共同購入(通販)展開、木育(もくいく)事業の立ち上げを行って事業規模を拡大しました。現在はネット通販(EC)への販路開拓を行っています。コロナ禍では、業務用食器部門は苦戦しましたが、巣篭もり需要に対し生協共同購入、ネット通販は共に需要の受け皿となり伸張しました。

産地問屋として、生産者と利用者を結びつけるという役割は創業時から大切にしてきています。『自然のぬくもりをくらしの中に』という社是の下、自然素材の心地よい温もりを暮らしの中に届けることで、情緒豊かで温かい家庭づくりに、また端材や間伐材の有効活用で無駄を無くし、サステナブルな森林の保護育成への貢献を目指します。

長野県SDGs推進企業に登録したきっかけを教えてください

SDGsを知ったのは、2017年の木材関係の学習会に参加したことがきっかけでした。2018年頃より主要取引先の生協がSDGs取組宣言をされるようになり、より認識を深めるようになりました。

創業時より提携生産者との関係強化、また持続可能な製品調達のため、ものによっては自社が必要な分だけでなく、まとまった数を定期的、継続的に仕入れることも行っています。植樹から育成管理、伐採、製材、乾燥、加工と木製品の調達には植樹から何十年という歳月が必要になります。持続可能な森林育成には、持続的な木材利用が不可欠となります。

会社のある地域では、塩尻市の中でも特に少子高齢化が進むエリアで地域崩壊の危機に直面しています。奈良井宿や木曽漆器、文化、工芸、観光産業を継承していくためにも、必要最低限の医療や教育体制が必要です。地元企業として将来にわたり住みやすい地域作りに貢献したいと考えています。 長野県のSDGs推進企業登録制度は、今の時代に当社の向かうべき方向や取り組む内容を再確認させてくれています。

取り組まれている事業を具体的に教えてください

まず、当社自身の〝脱プラ〟です。かつては時代のニーズに対応するため、お椀やトレーなど樹脂製品の扱いもあり、大きな売上にもなっていました。そんな中、2019年に調理食卓用品の生産をお願いしているパートナー生産者10社とSDGsをテーマに〝木育くらしの研究所〟と銘打って、国産材、国内加工を切り口に「国際テーブル&キッチンウェアEXPO」に出展したところ、想像以上の反響があり、伝統工芸に加え環境配慮をコンセプトとする製品のビジネスチャンスを改めて感じました。その後、取扱製品の選定基準や開発方針を見直し、ネット通販事業の立ち上げも同時に行いました。

また生産面では、創業より世代を超えて付き合いのある全国の生産者との関係強化にも引き続き力を入れています。コロナ禍前には、塩尻市でリアル開催を行っていた酒井産業グループの「取引先説明会」では、業界・業務課題の共有や情報交換、相互の交流を主な目的にしています。コロナ禍の為、2021年10月にはリモートで全国を結んで開催することができました。工芸は一度途絶えてしまうと再生は不可能に近い状況になります。厳しい時代が続きますが、今後も全国の木竹加工生産者と共に元気に頑張っていきたいと強く思っています。

SDGs推進企業登録制度のコミットメントに関しては、登録時の重点的目標として「2030年までにCO2排出量の25%削減」を掲げていました。目標達成へのアプローチとして、まず長野県が提供している様式を用いてCO2の排出量を算出しました。その結果、当社の従前の電力契約が、発電方法の約7割を火力発電に頼っていたことなどから、年間26tのCO2を排出していることになることがわかりました。これだけのCO2を業務改善で削減していくことは難しいので、検討を重ねた結果、長野県企業局が供給する再エネ率100%の電力に切り替えることで、2021年度中に排出量をゼロにすることができました。

誰一人取り残さないことがSDGsの理念ですので、当社の取り組みはトップダウンではなく、社員の自主性を重んじたボトムアップを原則としています。その一環として、年2回、社員自身が社内外問わずどんな取り組みをしたかをまとめた「SDGs自主学習報告書」を提出してもらっています。一人ひとりがSDGsを自分ごと化することが社内に浸透してきたと実感しています。
こうしたSDGsへの取り組みは、専用のWEBサイトを立ち上げて公開しています。CO2削減への取り組みや、WEBサイトを通じた活動の見える化を評価いただいたことから、『信州SDGsアワード2021』を受賞し知事から表彰されました。

SDGs取組のゴール別対応状況(2022年3月までの集計)
信州SDGsアワード2021県知事賞の盾
(長野県産のカラマツ材を松本養護学校高等部の木工班が加工)

今後はどのような展開を考えていますか

事業としては、既存の生協への卸事業の質と量を維持します。生協卸事業はボリュームも大きく、木材加工製品や情報を流通させ循環させるのに不可欠です。また生協自体がSDGsを高く掲げています。情報交換をしっかりと行い協同の取り組みを増やしていきたいと考えます。また「森と人をつなげる」、「木育カンパニー」としての役割を高め、深めていきます。森の話をくらしに届け、森と人が近しくなり、森の中で、暮らしの中で、ぬくもりを感じられる機会を創っていきたいと考えます。

さらに今後のデジタル化社会の浸透を見据えて、購買の主力となるZ世代に向けた準備として、EC事業の強化を加速しています。将来のユーザーである子どもたちに木育を通じ木に親しみを持ってもらうと同時に、ネット販売の整備に力を入れます。製品開発としては、〝森のチカラ〟をコンセプトに、既存の木材加工品に加え、枝葉の精油や、端材を利活用した木質チップなどの開発を行います。調湿、消臭、抗菌など〝森のチカラ〟でくらしの中の課題解決を研究して行きたいと考えます。全国の木竹生産者と酒井産業とのグループ一体となった取り組みが、国内の持続ある、ものづくり、もりづくりに貢献することを願います

漆器のお椀
木育カンパニー酒井産業 ヒト・モノ集合写真
酒井産業株式会社
代表取締役社長 酒井 慶太郎さん

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