事例紹介
INTERVIEW
太陽工業株式会社
SDGsを軸にした人材育成と実践で、価値創出企業へ
2022年3月17日
どんなことをしている企業ですか
太陽工業株式会社は、今年で63年目をむかえる長野県諏訪市のプレス部品メーカーです。グループ会社との連携により、金型設計・製作、プレス加工、表面処理、組み立てまでの一貫製造体制を実現しています。当社でつくった部品は、自動車部品からスマートフォン、デジタル機器など、みなさんの身近な製品にも用いられています。
長野県SDGs推進企業に登録したきっかけを教えてください
私は社内で「ISO 14001(環境マネジメントシステムに関する国際規格)」の担当をしていたこともあり、日頃から環境問題について情報収集をしていました。また、取引先から求められた調達要件のマニュアルを見たときに、法律だけ守っていれば良いという訳ではなく、企業の責任としてしっかりと人権や差別といった問題に取り組まないとサプライチェーンから外されかねないと肌で感じていました。そうした関心からSDGsを知ったのも比較的早い段階だと思います。
人事を担当していることもあり、SDGsに取り組むことは、持続可能な社会に向けて、課題に対し主体的に動ける担い手を育てることであり、ひいては社員の人間力を高めることにもつながるのではないかと考えたのです。そこで経営計画にSDGsを取り入れ、社として推進できるよう整備することにしました。
そんな折に長野県SDGs推進企業のことを知りました。登録したことで、社内外に「やっていくんだ」という意志を発信する良い機会となり、SDGsを社内に浸透させる第一歩にもなりました。また、社内にSDGsへの理解を広げる取組として、独自の「社内認定制度」を設けました。これは研修を経て試験に合格した社員に、認定書とSDGsバッジを進呈し、「SDGsキーパーソン」として認定するというものです。有志での取り組みながら、社員からも大きな反響があり、結果として多くの社員が参加してくれました。
特徴的な取組について教えてください
大きく分けて、社内と社外での取組があります。
社内は、先に述べたように社内認定制度による社員への「SDGs理解の促進」があります。「上から言われたからバッジをつけています」というふうになるのが嫌だったんです。取引先や家族から「SDGsって?」と聞かれた際に、ちゃんと答えられるようになってほしい。だから手を挙げてくれた人に対して、定時後に研修会を開いて理解を深める活動をしました。たとえ取締役でも、ちゃんと試験に合格しないとバッジをあげていないんですよ(笑)。
また、本来の事業とSDGsのつながりを意識することも重要な取り組みのひとつです。やはり製造業として、品質不良の製品を減らすことや生産性向上による環境負荷の低減を目指すことは命題と考えており、当社は10年以上前から、「環境効率(製造にかかるエネルギーから、1円の売上に対して使用したCO2を算出する)」の見える化を工場単位、職場単位で行っています。単純に「CO2の使用を抑えるためにやめる」のではなく、数値目標を設定して「CO2を価値のあるものに変えていく」という意識を各職場で取り組むことで、製造業においても、カーボンニュートラル、残業削減や社員の働きがいなど、SDGsの目標達成につながると考えています。
社外では、地元NPOからの「集まる場所がほしい」という声をきっかけに、「こども食堂」を当社の社員食堂で開催しました。当日は地元のエシカルな素材をつかった食事や、こどもが楽しめる体験の場を提供し、80名以上に参加いただきました。参加者に喜んでもらえたことは何よりですし、参画した社員も誰かの役に立てることを学ぶ場となったようです。また、この取組を各メディアに報じてもらったことで、地元の店舗や企業からコラボレーションしたいという反響をたくさんいただけたのも嬉しかったですね。
地域の宝である「諏訪湖の美化」にも力を入れています。年に数回「SDGsの日」という会を設けて、社内のSDGsキーパーソンに声をかけて湖の清掃活動をしたり、SDGsを紙芝居にしてこどもたちと地域課題について学ぶ時間をつくったりしました。
さらに、県内の学校で「働くこと」についての出前授業をしたほか、工場見学を受け入れるなど、「学校のキャリア教育」にも取り組んでいます。こどもたちに地元の企業や製造業について知ってもらい、諏訪という地域をもっと好きになってもらうことで、将来、進学や就職を考えるときの選択肢をもっと広く考えてくれたらいいなと思っています。
“SDGs”という共通言語があることで、地元企業や団体などとつながる機会が増え、さまざまな活動へと広がりました。ほかにも社員たちからアイデアが出てきたり、諏訪に本社を構える他の企業との共同開発でエコな商品づくりをしようという話をいただいたり、当社ならではの取組がまだまだ生まれそうです。
今後はどのような展開を考えていますか
社内では、SDGsに関する理解が浸透してきたので、次のフェーズとして“新しい価値をつくる”ということに力を入れていきたいです。いわゆる「CSV(共通価値の創造)」ですね。当社自身が持続的に発展していくためにも、既存事業の効率性をより高め、空いたリソースで新しい事業・サービスをつくり出していけたらと考えています。
社外では、諏訪湖の美化や場づくりにもっと取り組んでいきたいです。諏訪は、古くからの歴史や文化が残る素晴らしい土地ですが、諏訪湖の水質汚染といった環境問題、担い手不足の深刻化など、さまざまな課題も抱えています。
諏訪湖を守り活かしていくこと、次世代を担うこどもたちを育んでいくこと。地域の一員として課題の解決に挑み、地元を元気するための活動をしていきたいですね。
林 道明さん
太陽工業株式会社
諏訪市四賀107番地