事例紹介

INTERVIEW

齋藤木材工業株式会社

地元の木材をもっと身近に、持続可能な地域づくりへの貢献

2022年3月17日

どんなことをしている企業ですか

当社は今年で創業160年を迎えます。創業当時は地元のサワラで酒樽を作っていました。その後、味噌樽、桶、建築材である集成材(木材同士を接着して再構成する材料)の製造に着手するなど、時代の変化と共に製造するものは変わってきましたが、一貫して地域産及び国産の木材を活用した製品を作り続けています。

長野県、特に地元の東信一帯に多数植えられているのがマツ科の唐松です。強度はあるものの成長段階でねじれる習性があるため扱いづらく、主に土木用材としての用途に限られていました。しかし、集成材にすることにより、強度を活かしつつ、ねじれを抑えることができるようになり、現在では、唐松の集成材は強度が求められる建築物に多く用いられるようになっています。

唐松の集成材では歴史と経験、そして高い技術をもつ当社。優れた特性を活かし、地元信州の唐松にこだわった集成材を“唐松丸”としてブランド化し、その製造・販売及び木造建築物の設計・施工まで手掛けています。

唐松の集成材

また、庁舎など大型の木造建築物を得意とし、1,200棟という国内屈指の実績を有しています。国産唐松による日本で初めての木造ドーム(やまびこドーム)や世界最大級の木造ニプロハチ公ドーム(旧大舘樹海ドーム)、長野県立武道館など、湾曲構造用集成材の製造でも国内屈指の製造技術を有しています。

長野県立武道館

長野県SDGs推進企業に登録したきっかけを教えてください

SDGsに取り組んだのは、日本には豊富な森林資源がありながら、建物に使われている木材の多くは輸入品に依存している現状をなんとかしたいという想いからです。住宅の多くは木造ですが、その木は多くが外国産材です。ほとんどの日本人は木を見て安らぎを感じたり、美しさを感じたりしますが、普段どこで育った木なのかを意識することはありません。SDGsの考えを通じて、国産材、特に信州が誇る唐松に目を向けていただきたいと考えたのがきっかけです。SDGsを調べていく中で、長野県はSDGsの先進県であり、また県の登録制度があることを知り、登録を決めました。

登録後はカタログを作り、社内外へSDGsと地元の木を使っていただけるよう啓蒙に努めました。また、登録企業とのコラボにも積極的に挑戦しています。せっかく登録しましたので、登録企業から仕入をするように心がけたり、人的交流を行ったり、登録企業であることにメリットを感じています。異業種であってもSDGsが共通言語になるので、交流のきっかけになっています。

取り組まれている事業について教えてください

森林が県土の約8割を占める長野県ですが、そのおよそ4割が人工林です。その人工林の5割を唐松が占めていることは、長野県民にもあまり知られていません。しかも、その唐松の7割が収穫期を迎えています。木はCO2を吸収・固定して酸素を排出していますが、老木になるとその機能は低下してしまいます。木の成長量と使用量のバランスを取らなければ山は荒廃してしまいます。現在は、成長量に比べて使用量が著しく低い状況です。これは弊社だけでどうにかできるものではなく、社会全体で意識して取り組まなければなりません。
そこで、弊社では地元の木に触れる機会を提供し、少しでも森林や環境に興味をもってもらえるよう商品開発を進めています。木製の消毒スタンドやテーブル等の家具、トイレユニット、サウナ、薪、スマホスタンドなど、身近に使ってもらえる商品としてECサイトで販売していく予定です。

また、時代の変化とともに社会的な役割もCO2の吸収や生物多様性、木材生産の効率化などが求められるようになりました。そうしたニーズに応えようと、上小森林認証協議会を中心に調査研究のプロジェクト(にぎやかな森プロジェクト)が発足しており、当社はその資金及び人的支援をしています。これは直接弊社の事業に関わるものではありませんが、外部の機関と連携し、森林の活用についても考えています。

この他、東京都江東区にある学校の建築を手掛けたことが縁で、同校の修学旅行の受け入れを定期的にしています。今はコロナ禍で中断していますが、工場見学や講演などを通じて森林や木材に関する教育の機会を提供しています。子ども達が森林や環境に関心をもってくれればと思っています。県内の林業大学の生徒の受け入れも定期的にしていて、これをキッカケにして当社に入社してくれた社員もいます。

工場見学の様子

今後はどのような展開を考えていますか

当社の経営理念で『緑豊かな山を育て次の世代に大切な緑の山を繋ぐ』と謳っているように、森林サイクルの実現を常に描いています。集成材は今後も作り続けていきますが、これは原木の約3割しか利用できず、残り7割は製紙用チップやバイオマス燃料などに利用してきました。その7割にさらに付加価値を付けた商品が薪やテーブルです。ほかにも商品化を進めているものもあります。より競争力のある商品を開発し、原木を少しでも高く買う。これが森林サイクルにつながると考えています。ウッドショックやコロナ禍で予定が遅れましたが、2022年の4月か5月にはそのための工場も稼働予定です。
これらの新商品は、4月以降にECサイトで販売していく考えです。だれ一人取り残さないというSDGsの目標にあるように、この事業では地域の障がい者雇用を積極的に進めていく方針で、現在調整中です。

今後も地域の木材を使ってもらえるよう、あらゆる場面で木や森林に触れる機会を創造すると同時に新たな商品化にも力を注ぎ、循環型社会の構築を目指していきます。

お客様の声

江東区有明西学園 校長 福田 克彦 様

木を多用した新校舎は、当校の教育目標の中の「優しい人」「学びを深める」「挑戦する人」の実現に大きな役割を担っています。
開放的な教室は生徒も先生もリラックスして生活できる環境になりました。お互いに気持ちにゆとりが生まれることで、学園全体が笑顔あふれる「優しい人」の実践に貢献してくれています。
また、木の音を吸収する特性により、余計な音が吸収されて授業に集中しやすいという声があります。学園全体で取組む昼読書は、生徒達が本の世界に入り込んでいます。優れた調湿作用も学習に集中できる要因になっています。生徒たちは、木は生きていることを実感しており「学びを深める人」育成の土台になっています。
木を多用した校舎になったことで、日本の森林環境問題について学び、外部機関との連携による木育を通じて木を使い植えることの重要性の理解も進みました。校舎に使われている唐松の植樹体験などを通し、“木を多用した校舎”の意味を考えさせることが生徒達を大きく成長させる教育活動につながっています。

齋藤木材工業株式会社
担当╱業務管理部 林 宏和さん 代表取締役社長 齋藤 健さん 経営戦略室 田島 忍さん

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