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ICS-net 株式会社

“隠れた”食品ロスに注目し、世界のサーキュラーエコノミー実現を目指す

2022年3月11日

どんなことをしている企業ですか

ICS-netは、食品メーカー出身の3名が食品原料の廃棄ロスを何とか解決しようと2017年8月に起業しました。現在は、食品原料のWEBマッチングサイト「シェアシマ」の運営、中国やタイ、ベトナムから乾燥野菜などの食品原料や食品容器の輸入卸、WEBサイトの受託運営、食品開発コンサルティングの4つの事業を展開しています。

特に注力しているのが食品原料を買いたい人と売りたい人をWEB上でマッチングさせる「シェアシマ」です。これは食品メーカーが廃棄する予定の原料を取り扱う、これまでにないプラットフォームで、「その原料、シェアしませんか」が名前の由来となっています。

食品添加物などの食品原料はニッチ商品が多いため、現状では必要な商品を探すことが難しいのですが、そうした中でも食品メーカーは1年に2回(春・夏、秋・冬)の新商品開発をしなければならず、原料探しには苦労をしています。その大変さや手間を、より簡単で、かつ安心して探すことができる手段がないか。また、商品が売れずに大量廃棄される食品原料を何とかできないか。そんな想いから開発に至ったのが「シェアシマ」です。

長野県SDGs推進企業に登録したきっかけを教えてください

県の登録制度が始まる前から食品ロスや地域の雇用等の社会課題に取組むことが企業理念でした。設立当時、SDGsは社会にまだ浸透していませんでしたが、セミナーへの参加などで勉強を重ねると、当社の目指す方向性と重なると気づいたため、県や登録企業とのつながりを持ちたいと考え、登録しました。登録後には県が主催するイベントにも積極的に参加していて、2021年3月には「ビジネスマッチングイベント」に登壇したり、現在は、当社と同様の課題意識を持つ登録企業による共同プログラム「SDGsパートナーシップゼミ」に参加したりしています。

登録したことで長野県のSDGs推進度合いを再認識し、県内企業としてSDGsを推進するにあたり、やるべきことの再構築ができました。登録企業とのディスカッションを通して、他社の考え方、悩み、課題を知ることもできたことで、他業種間でのSDGsに対する推進内容の理解が深まり、同業他社、他業界とのコラボレーションによってシナジー効果が得られる未来像も見えてきたことはとても良かったと思っています。

まさに起業の理由がSDGs達成につながるものということですが、具体的にどういうアプローチをしているのでしょうか

一つは、BtoBによるWEB上での食品原料のマッチングと、それによる食品原料の廃棄やロスの削減です。農林水産省の調べ(平成29年度)によると、食品廃棄量は、異物混入や腐敗、賞味期限切れ等で年間2550万t。食べられるのに捨ててしまう食品ロスは612万tに及んでいます。食品ロスの内訳は、事業系が328万t(54%)、家庭系が284万t(46%)です。食品メーカー及び卸で事業系の約42%にあたる137万tを廃棄しています。コンビニで賞味期限切れの食品が捨てられていることは知っている人も多いと思いますが、その比ではない食品原料が大量に廃棄されていることは、あまり知られていません。

廃棄の原因は、需要の予測を間違えて大量の在庫を抱えたり、仕入れ時のロットが大きいために歩留まりが悪く、ロスとなってしまうことや人的ミスが挙げられます。これは販売ネットワークが限られている点も大きく影響しています。こうした余剰在庫となってしまった食品原料を、売りたい人と買いたい人をWEB上でマッチングすることでネットワークを拡大させ、社会的課題である食品ロスの解決につなげることが「シェアシマ」の貢献領域というわけです。実際に、2020年4月から7月のわずか4か月で約1tの廃棄予定原料を廃棄させずに販売できました。

「シェアシマ」の特徴は、簡単に安心して食品原料を探せることです。商品の安全性は商品規格書をWEB上で確認でき、問い合わせや質問も「シェアシマ」内で完結できます。従来と比べて、「依頼から納品までの時間」を約60%短縮することができるため、二つ目の取り組みとして、食品メーカーや原料購入者の働き方改革の促進につながっています。

こうした取り組みはこれまでにないもので、雑誌『経済界』の「金の卵プロジェクト」でグランプリを受賞しました。世界的なコロナ禍となってしまいましたが、緊急事態宣言が発出されたことが「シェアシマ」にとっては追い風となりました。テレワークやデジタル化が推奨されたこと、直接の商談が難しくなったこと、電話でのやりとりだけでは商談が思うように進まない、などの環境下で「シェアシマ」への問い合わせが増えたのです。

また、月に1回テーマを決めてセミナーを開催しています。毎回4社程のメーカーが新商品をプレゼンテーションし、それを200社程の参加者が聴講した上で商談をするため、商談も成立しやすくなりました。それに伴い会員登録も毎月100社ずつ増え、2021年11月時点で1,700社を超えています。

以前は、食品原料の調査や調達のほとんどが展示会でのリアルな商談がきっかけでしたが、オンライン上の「シェアシマ」が新たな情報交換の場になりました。現在も会員数を増やすべく、様々な取組をしているところです。

今後はどのような展開を考えていますか

まずは目標会員数を5,000社に増やし、2022年8月には食品ロスにつながる余剰在庫などを専門に扱うモールを立ち上げ、BtoBに特化したECサイトの開設を目指します。実現できれば業界初となるはずです。

2023年8月をめどに資材(バイオマスプラスチックや、環境に配慮した紙の容器等)のモールを新設したり、他社サービスと連携したアレルゲン調査キットの提供、生産管理ソフト等の取扱いにも着手しながら、2025年には日本の食品流通をリデザインし、サステナブルな社会を実現させることを目指しています。登録会員は、国内の食品原料メーカー3万2000社のうち、約3分の1にあたる1万376社を見込んでいます。そして、「シェアシマ」が国内で成功したあかつきには、海外拠点の立ち上げや海外輸出、海外からの輸入などグローバルポジションの確立も視野に入れています。

そして、2030年には、日本の食品業界の地位向上に貢献すると共に、世界の食品ロス削減や、飢餓をなくす一方で、雇用の増加や、サーキュラーエコノミーの実現によって、SDGsの目標達成に貢献したいと思っています。

お客様の声

日本水産株式会社 

業務用食品部 調味料課
金内 祥平 様

当社は漁業会社として養殖を始め加工食品、機能性油脂の開発など、事業の多角化を図っており、現在は水産系の濃縮ブイヨンやソース類の品揃えを強化しています。創業110年を超える歴史のなか、リテールのユーザーとは幅広い取引がありましたが、メーカーへの顧客接点は限られていました。そのため、新規商品の提案機会が少ないという課題がありました。 そんななか、展示会を通じてICS-net様の取組を知りました。今後は幅広いメーカー、リテール、卸が“シェアシマ”を活用するイメージができ、創業から同社の成長過程に参画できればと導入を決めました。当社もウェビナーで発表したことで、エキス業界の方々と意見交換を行う機会が増えました。中期的な業界の変化を見通すことにつながったと考えています。

ICS-net 株式会社
担当/専務取締役 呉 雪梅さん

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