事例紹介
INTERVIEW
株式会社六協
廃棄物を出さない循環型の建設業を確立しつつ、社員にとっても持続可能な企業へ
2022年3月11日
どんなことをしている企業ですか
株式会社六協は三協精機製作所(現日本電産サンキョー㈱様)の営繕関連工事を主とする企業として1968年に誕生しました。六協の六は、「三協精機の倍働き倍儲けよう」という創業者の強い想いが込められています。
営繕関連の工事で建設に関する経験やノウハウを積み、建築から土木、解体工事と業容を拡大していきました。その後、地元密着企業の強みと営業力を活かして土地開発にも着手し、土地探しから設計・施工、解体ができるビジネスモデルをもった総合建設企業として高い信頼を獲得しています。
また、産業廃棄物処理業の許可を取得し解体工事や建設現場から排出される、がれき類をリサイクルしています。県とは「長野県産業廃棄物3R実践協定」を結んでおり、サーキュラーエコノミーの実現を目指し、持続可能な地域づくりや循環型の建設業を目指しています。
長野県SDGs推進企業に登録したきっかけを教えてください
私がまだ青年会議所に所属していた時、SDGsの前身であるMDGsの重要性について見聞きし、関心を寄せておりました。その後、業界紙で長野県がSDGs推進企業登録制度を始めていることを知り、既に登録されていた企業の中には知っている企業もあったことから、SDGsの広がりを実感しました。
その頃は、私が社長に就任して3年目にかかり、今後の会社の在り方を検討している時期でした。 “同業者が取り組んでいるなら当社も何かできる事があるのではないか?” そんな思いから第2期での登録を申請しました。
申請書にある42項目を一つ一つ進めていくうちに自分の考えが少しずつまとまり、会社のあるべき姿が見えてきました。SDGsをベースにした取り組みは、正に経営の根幹ともいうべきものでした。
また、当社の経営理念『共に生きる』は関わる全ての人と共に生きることを謳っており、SDGsの“誰一人とり残さない”という想いと同じくするものでもありました。
取り組まれている事業はどのようなものですか
大きく分けて2点あります。1点目は「廃棄物の削減を中心とした環境への取組」です。建設業では大量の廃棄物が排出されています。一部は、上述の再生砕石というリサイクル製品を生産する取り組みを行っていますが、その他の廃棄物は、これまでは当社が運営していた焼却炉で処理していました。SDGsに取り組み始め、脱炭素社会を目指す中で、熱回収もされていない状況のまま二酸化炭素を放出していて良いのだろうか。焼却炉も稼働から25年が経ち老朽化が進んでいたことから、修繕や新設をして焼却業務を継続するべきか、もしくは焼却業務から撤退し、別事業を立ち上げるべきか検討していました。
焼却以外の処理方法を広く学ぶため、様々な施設を見学していた折に、リマーケティングビジネスを展開する群馬県の企業と出会いました。その企業は、廃棄物を「モノ」として捉え、リユース、マテリアルリサイクル等を行い、廃棄物を“ゴミ”とせず市場に戻しながら、最終的に残った最小限のものを廃棄物として処理していました。その光景を見た時に、「私たちが目指すべきものはこれだ」と感じ、これまで行ってきた焼却業務から撤退し、「モノ」の価値を提案する、極力“ゴミ”を出さない「リサイクルセンター」の開設を決断しました。今はその企業と協同して、新規事業の開設に向けた取組を行っています。
そして、これまでのリニア型の一方通行な消費型の建設業のスタイルから設計・施工・解体・廃棄物処理に至るまでを一貫した循環するシステムの構築を目指し、サーキュラーデザイン(建設物が解体される時の事を考えたデザイン)への取組、廃棄物を極力出さない施工の在り方、リユース、リサイクルを念頭に置いた解体工事、そして極力“ゴミ”にしない為のリサイクルセンターを構築し、サーキュラーエコノミーを実現できる会社づくり、仕組みづくりを進めています。
2点目は、「誰もが働きやすい職場づくり」です。当社には先代の社長の頃から働いてくれている高齢の方、出産の為に会社を離れなくてはいけない方、子育て中の方もいました。こうした折に、経済産業省・日本健康会議主催の「健康経営優良法人認定制度」を知り、社内制度を見直し、休暇制度の充実や柔軟な働き方に対応するための「短時間正社員制度」の新設をしました。また、社員の運動習慣の定着を促すために、月毎に歩数のランキングに応じたインセンティブの付与を行う取組なども行いました。こうした取組によって、高齢になっても元気に働けている方や、出産後に復職した方もいます。結果として「健康経営優良法人認定制度」や、「長野県職場いきいきアドバンスカンパニー」の認証を受けることにもつながりました。社員の働きやすさや働きがい、健康など、社員一人一人の考え方や環境に合わせた働き方の必要性を認識したうえで、更なる企業価値向上に努めています。
今後はどのような展望をお考えですか
まずは、新たなリサイクルセンターの早期開設を目指すと同時に、社内のSDGsに関する教育や意識改革を進めていきます。協力会社や建築現場で共に働く職人さんも巻き込んでSDGsへの関心を広めていくことも重要だと考えています。リサイクルセンターでは、地元の学生や子どもが環境について学べる場を作り、ワークショップなどができる施設にしたいと思っています。
また、今後の建設の在り方については、上述のような循環型の建設を促進する仕組を社内で構築していきます。まず自分たちが「廃棄物を極力出さない循環する建設業のスタイル」を確立し、同業他社ともパートナーシップを組んで県内の建設業界全体で取り組んでいければと思っています。
加えて、今後はカーボンクレジット市場も整備されていきますから、それに先んじた取り組みができないか、下諏訪の豊富な温泉を利用して何かできないか、など、SDGsに取り組み始めてから、私自身の視野が広がり、環境に対する興味も高まりました。今後もサーキュラーエコノミーの実現に向けて建設業としてできることは前向きに取り組んでいく考えです。
社内でSDGsを推進することで、社員の働きがいの向上につながりました。社員が様々なことに能動的に取り組むようになったことも大きな効果です。持続可能な企業を目指していく上でも、大きな力となりそうです!
株式会社六協
長野県諏訪郡下諏訪町5259