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リコージャパン株式会社長野支社

社員一人ひとりが自分の視点でSDGsを語れる会社に。長野から全国へ、取組の輪を広げていく。

2023年3月17日

全国47都道府県に支社・事業所を持ち、長野県内にも7か所の拠点を持つリコージャパン株式会社。複合機の販売をはじめ、ITサービスやコミュニケーション領域まで価値提供範囲を広げ、顧客の課題解決に役立つ商品やサービスを提供しています。SDGsと事業の同軸化を掲げて積極的に活動し、これまでに働き方やSDGsに関する数々の賞を受賞してきました。取材当日は、環境に配慮して新たに建て直された上田事業所を訪問。長野支社長の難波伸次(なんば しんじ)さん(写真中央)と、2022年4月に新設されたNB(ニュービジネス)ソリューション推進室長の今井栄(いまい さかえ)さん(写真左)、そしてSDGs推進を中心になって進めてきた山本修一(やまもと しゅういち)さん(写真右)に、具体的な取組内容や感じている手応えについてお話を伺いました。 *以下敬称略

SDGsへの貢献と事業の同軸化を目指して

貴社は「第2回日経SDGs経営大賞」の大賞を受賞、長野支社でも「信州SDGsアワード2021」で長野県知事賞を受賞していて、いわば国内を代表するSDGs推進企業ですが、取組の経緯について教えてください。

難波:リコーグループは2002年に、目指すべき社会を「Prosperity(経済)」「People(社会)」「Planet(地球環境)」のバランスがとれた社会と定義し、実現に向けてグループで取り組む重要社会課題を発表しました。

その後2018年3月に、株式会社リコーの山下社長からグループ社員に向けて「事業の繁栄には、同時にその事業がSDGsの達成に寄与していることが必須である」と発信され“SDGsへの貢献と事業の同軸化”を目指して、47都道府県すべての事業所で本格的に取組をスタートさせました。

難波伸次さん

リコージャパンとしてSDGs活動に積極的に取り組む理由は何ですか?

難波:私たちは日々SDGsに取り組むことが3つの価値に繋がると考えて活動しています。それは「お客様の課題解決にも繋がること」、「社会課題解決に向けてお客様や地域社会と連携し、信頼や期待を醸成すること」、そして「私たちの提供する価値がどのように社会貢献しているのかを実感することで、社員が仕事や会社に誇りを持っていきいきと働けること」です。

SDGsと事業を両立させていくためにはお客様と一緒にSDGsに貢献することが重要ですし、顧客の企業価値向上にも貢献できます。また、社員がいきいきと誇りを持って働くことに繋がると考えて日々さまざまな取組を行っています。

長野支社ではどのように取組を進めているのでしょうか。

難波:社内外にSDGsを正しく伝えていくための推進役として、2018年11月に「SDGsキーパーソン」という制度が誕生しました。各支社・事業所で数名ずつ有志を募り、彼らが中心になって取組を進めています。

長野支社では、山本をはじめとした3名がキーパーソンとして活動してくれています。長野支社では2022年4月にSDGsに特化した「NB(ニュービジネス)ソリューション推進室」という新しい部署を創設し、室長として今井にもSDGs推進に携わってもらっています。

山本:2018年当時は92名でスタートしたキーパーソンですが、現在は全国で500名を超えています。毎月の研修で学びを深めながら、社員にSDGsの理解を広める活動や、お客様や地域にも普及したりするような役割を担っています。私は専任でSDGs推進業務を行っていますが、中には営業などの業務と兼ねて担当しているキーパーソンもいます。

全国のキーパーソン同士で情報交換をしながら、良い取組があればそのまま取り入れたり、それぞれの支社に合う形でアレンジしたりして、取組を進めています。

子どもたち一緒に考えるSDGsで、アワードを受賞

全国の支社、事業所でさまざまな取組をしているかと思いますが、長野支社ならではのSDGs活動は何かありますか?

今井:まず一つは、環境配慮と働きやすさを両立したオフィスの建設です。リコーグループは脱炭素に積極的に取り組んでおり、リコージャパンでは今、事業活動におけるエネルギー使用量の削減を目的として、移転や新設の社屋を「ZEB Ready」以上で建てています。
上田事業所は2021年10月に上から3段階目の「ZEB Ready」認証で新しく建て替えられ、一次エネルギー消費量を51%削減している状況です。私たちは、高いエネルギー効率と快適性を両立したオフィスを、脱炭素の実践事例としてお客さまに紹介しています。

今井:43%は建物の設計で削減し、8%は「RICOH Smart MES」という制御システムで空調設備や照明を最適な状態にコントロールすることで、51%の削減を実現しています。たとえば、昼間には窓際の照明の明るさを抑え、誰もいない場所は照明を自動でオフにして無駄な電気使用量を減らしています。

難波:定時を過ぎると照明の明るさが抑えられ、社員たちが続々と退社しはじめるんです(笑)。時間を気にせずに残業する社員が多かったのですが、今ではほとんどなくなりました。暖色で少し暗い照明になるので、自然と気持ちが切り替わるのだと思います。

画像:『RICOH Smart MES』の解説イラスト
参考:https://www.ricoh.co.jp/service/lighting-and-air-conditioning-control-system

今井:また最近は、自動車移動による二酸化炭素の排出削減のため、リモートワークや訪問先から直帰することを推奨しています。

徹底して、環境にも人にも優しい職場づくりが行われているのですね。

難波:さらに当社では、お客様と一緒にSDGsに貢献できる取組として、省エネタイプの複合機を1台販売するごとに、NPO団体等を通じマングローブを1本植える植林活動をしています。

CO2の吸収源として注目されているマングローブ植林活動は、気候変動を抑える効果に加え、海や陸の豊かさ、そしてまち自体を守り、飢餓や貧困を減らしていくことに繋がります。つまり、お客様は製品を購入することで社会貢献ができ、私たちは事業を通してお客様の企業価値向上に寄与できるのです。

SDGsと事業の同軸化を、わかりやすく可視化した例ですね。社外にSDGsを広げていくきっかけにもなりそうです。

画像:「身近な商品から様々な認証マークを探すゲーム」のスライドの表紙

山本:そうですね。長野支社では企業や子どもたちにSDGsを広める活動に力を入れています。特徴的なのは、幼稚園・保育園の子どもたちや小中学校の皆さんに向けて行った「出前SDGs教室」ですね。

わかりやすくSDGsについて解説した「デジタルのSDGs紙芝居」や、身近な商品から様々な認証マークを探すゲームなど、SDGsの認知を深めて自分ゴト化できるプログラムにしました。こちらを評価され「信州SDGsアワード2021」で長野県知事賞を受賞することができました。

難波:教室終了後に子どもたちに書いてもらった質問を見ると、「ジェンダー平等を実現するためにどんなことをしたらいいか知りたい」や「ごみがない海や世界はいつできるのか」など、とても素直でまっすぐな言葉が並んでいて驚きました。その回答を考える際に、私たち自身も改めて勉強になりましたね。

山本:企業や自治体に向けたSDGs研修会も開催しており、この紙芝居やゲームは大人にもわかりやすいと好評です。研修会ではこうした基礎情報の紹介に加え、自分たちの仕事がSDGsにつながっていることを実感してもらうために、仕事をSDGsの17の目標に当てはめるワークショップも行いました。以前から何気なくやっていた活動が、実は社会貢献につながっているとわかると、やはり皆さんのモチベーションも上がりますね。

山本修一さん

SDGsが営業の重要なツールになり、社員の意識も向上

会社の規模が大きいと、社内浸透の促進にはより時間がかかるのではないかと思うのですが、実際にはいかがですか?

山本:たしかに一番苦労したのは社内浸透かもしれません。私たちは本来製品を販売する会社のため、どうしても業績が念頭にあります。当初は「SDGsよりも業績が大事だ」という社員もいました。実際にはすべての業務がSDGsにつながっているのですが、最初は上手く説明できませんでしたね。

社員にも関心を持ってもらうために、まずは私自身がキーパーソンとして「SDGsの伝道師」になろうと決めて勉強しました。こまめに情報発信をしながら社内の階段やエレベーターなどにSDGsに関する情報を貼ったり、社内勉強会でカードやボードゲームを使い楽しみながら学んだり、自分ゴト化してもらうための取組を地道に実施してきたことで、だんだんと会社全体の意識が高まってきたと感じています。

一人ひとりが納得して取り組むには、いかに自分ゴト化できるかどうかが重要ですよね。さまざまな取組を通して、皆さんのなかで手応えを感じることはありますか?

山本:お客様との会話の糸口として、SDGsを使ってくれる営業担当が増えてきました。当社のSDGsの取組を紹介したり、お客様が困っていることにSDGsを絡めて提案をしていると聞いています。
営業社員に頼まれ、お客様に長野県SDGs推進企業登録のアドバイスをさせていただいたこともありました。お客様に喜んでいただけると営業担当も喜びますし、それが成功体験として積み重なっていくことで、個人の働きがいにもつながっていると思いますね。

今井:社員全体の意識が少しずつ変化しているのは感じますよね。マングローブの植林の取組は社員にとってもわかりやすい例ではありますが、それだけでなくさまざまな観点でSDGsを捉えて、お客様に提案できる社員が増えてきました。
そして先日キーパーソンの追加募集をしたところ、新たに6名の社員から立候補がありました。4月(2023年)からは現在の3名から9名の活動となります。これにより社員の意識の変化もさらにスピードアップすると思います。

先ほど山本が「SDGsの伝道師になろうと思った」と言っていましたが、実際に温度が100℃を超えるくらいの熱量で進める人がいなければ、周囲の温度もなかなか上がらないのだと、当時肌で感じていました。キーパーソンの山本が全力で旗を振る役割をしてくれたことで、ここまで前進してきたと思います。

今井栄さん

山本: 熱量は高かったのですが、活動にあたっては社員に負荷がかからないように心がけました。「やらされ」では続きませんし、社員の取組が“働きがい”にどうしたらつなげられるかを考えています。

そもそも時間がかかるものとはいえ、最初に全力で旗振り役を担う人がいるかどうかは社内浸透において一つのポイントかもしれませんね。

難波:そうですね。私たちのお客様の間でもSDGs推進の機運は高まっていますし、今では営業担当が提案書をつくる際にも、SDGsの17の目標の中から紐づくゴールを記載するようになりました。そうした一つひとつの取組が社員の意識向上につながっていると思いますし、ゆくゆくは社員一人ひとりが自分の視点でSDGsを語れるようになっていくことがとても重要だと考えています。

SDGs意識の高い企業と協働し、取組の輪を広げていく

では最後になりますが、SDGs活動に関して今後の展望を教えてください。

今井:私は2022年4月に創設した「NB(ニュービジネス)ソリューション推進室」でSDGsの活動を始めましたが、理解を広げていくことの難しさを感じています。地球上の全ての人が日頃から環境のことを考えていないように、社内でも温度差が生じます。

ただ、こうした取組の効果は草の根的に少しずつ表れていくものだと思うので、目に見える短期的な成果にこだわりすぎずに、全体的な温度を上げていけるように地道に取り組んでいきたいですね。

難波:ちなみに、リコージャパンでSDGsに特化した部署(「NB(ニュービジネス)ソリューション推進室」)が支社にあるのは長野だけです。

それは、SDGs活動において長野県は特に期待をされているということなのでしょうか。

難波:そうですね。私は2021年に長野支社に着任しましたが、長野県はSDGs先進県と呼ばれるだけあって意識の高さを肌で感じます。

私たちは自社の事業を通してできることに取り組んできましたが、さらにSDGsを広めていくために、前向きで意識の高いSDGs推進企業の方たちと協働していきたいなと。企業内で完結せずに、各企業の強みを活かし協働することで新しいものを生み出していけたら、意識が底上げされて良い方向に向かっていくのではないかなと思います。

山本:私たちキーパーソンは、コミュニケーションツールの「Microsoft Teams」を使い全国の支社・事業所の取組事例やアイデアを共有していますが、そういったことをSDGs推進企業同士でもできたらいいですよね。意欲はあるけれど、何から始めたらいいかわからない企業様もいらっしゃるので、気軽なコミュニケーションを通じて、SDGsの輪が広がっていけば良いなと思います。 

リコージャパン株式会社長野支社
昭和34年創業。長野市風間に長野支社を構え、県内7ヵ所に拠点を展開している。リコー製品を中心とした商品・サービスの提供をはじめ、業務改善を含めたコンサルティングから、システム構築、アフターサービスまで、さまざまなソリューションをワンストップで提供。SDGsを経営の中心に据え、事業活動を通じた社会課題解決を目指して、グループ全体で精力的に活動している。

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