事例紹介

INTERVIEW

株式会社 山翠舎

“古木”を通じてモノを大切にする社会へ

2020年10月16日

どんなことをしている企業ですか

当社は、設計と施工の両方を行う建築会社です。飲食店を中心に内装を含めて“人と自然に寄り添った空間づくり”を提供しています。特徴は“古木”の利用です。“古木”により、独特な味わいをもった空間づくりが可能です。“古木”は一般的な建築資材に比べて、直線が取れない、硬い、重い、という特徴があります。当社には経験と知識を持った職人がおり、古木の加工に秀でた、古民家の移築や再生の専門集団です。古民家の解体、移築、設計施工、引き渡し、店舗への集客の相談などの経営コンサルティングまでワンストップで対応できる体制を整えており、コストを合理化しながら時間のロスも解消したソリューションを提供しています。

当社は、1930年に長野市で建具屋として創業した後、住宅などの一般建築業を行ってきました。以前は、下請け施工会社でしたが、2006年から“古木”の買取・販売事業を始め、差別化を図ってきました。これまでに400店舗以上の古木を使った設計・施工実績があり、現在では、大手メーカー店舗ともディベロッパーを通じてマッチングするなど、幅を広げています。

 SDGsと経営をどう紐づけていますか

2006年から古木の買取・販売を始め、古民家再生に取り組んでいます。SDGsが提唱される前から、サスティナブルな社会づくりにつながる事業を始めていました。県内に約9万2千戸(昭和63年)あった古民家は、現在、約3万5千戸(平成30年)まで減少しています。当社のコンセプト“もったいない“という考えが原点にあるため、既に取り組んでいたことが、結果的にSDGsだったと考えます。事業によって儲かることよりも、社会的な意義があって、その手段として事業があるという考えに立っています。

2006年当時から“古木”が大きな注目を集めていたわけではありません。2017年に信州ブランドアワード2017企業・事業ブランド部門賞を受賞し、2018年にEYJapan主催「EOY Japan Startup Award 2018」甲信越代表に選出されたことで、注目をいただくようになりました。2019年にはグッドデザイン賞もいただいています。

次の戦略は、社会に必要不可欠な存在になっていくことです。空き家が社会問題となっていますが、古民家の解体にも費用がかかる中で、持ち主、新しく使う方、我々含めて、“全方よし®”のモデルを展開していきたいと考えています。

また、大工の高齢化も進み、技術の継承などの課題もあります。当社では古民家再生を担う大工の5割超が若者です。熟練の大工から若者への技術の継承を行っています。安く買う、安く売る時代から、価値を理解して、高く買う、価値を創造して高く売る仕組みを“古木”を通じて確立していきたい。それが、“全方よし®“モデルとなって社会課題解決にもつながると考えます。

SDGsを進める上で難しかった点など教えてください

DGsを進める際に、難しかったのは、社員の意識をどう高めていくかです。当社も含めて、経営者は悩むと思います。当社では、“古木”を使ったSDGsロゴのピンバッジを作成し、17ゴールのうち、達成できたゴールに色を塗っています。SDGsって何?という社員の意識向上のきっかけづくりをしています。塗料にもこだわっており、自然素材の粘土塗料を使っています。このように、一つ一つに意味を持たせるこだわりが重要と考えます。

また、“古木”の利用を始めた当時から全ての社員がこの事業に理解を示したわけではありません。自社の“古木“がメディアにも取り上げられるようになり、家族からも評価されることで、社員の意識が高まってきました。

SDGsに関して、現在、どのような取り組みを進めていますか

県の補助金を活用して、長野の事務所に“古木”を利用した交流スペースを設けました。この“空間づくり”によって、社員自身も“古木”がつくりだす空間の良さに気づき、また社会的意義のある取組ということが浸透してきました。この空間を、SDGsを進めようとする企業との交流の場としても使ってもらいたいと考えています。“古木”の味わいに触れることで、現代の使い捨て文化から、モノを大切にするという価値観を共有し、新たな事業展開とパートナシップにつなげたいと考えています。

また、先程ご紹介したピンバッジは、自社の古木を使って、工業高校が加工し、障がい者施設で色を塗ってもらうという展開を考えています。このように、SDGsを通じて新たなパートナシップを築いていきたいと考えています。

今後の展開やSDGs推進企業へのメッセージをお願いします

長野県SDGs推進企業として感じることは、この制度に申請する方は事業を通じて社会課題解決にも取り組もうとする意識が高い会社ですので、登録企業の中で新たなパートナシップが創出できるはずと考えています。中小企業の皆様は、自社の良さに気づいていない方も多いはずです。他社との交流を通じて、新たな気づきを得ることができますし、PRやマーケティング手法を学ぶことができます。

当社の交流スペースを使っていただきながら、SDGs推進企業の皆様と“共創“していきたいと考えています。自社は”古木“の提供から設計・施工まで行うことができます。他業種の皆様とも、同業の建設業の皆様とも連携できます。登録企業の皆様と切磋琢磨し合って、新たな価値を提供し、長野県から全国に、世界に発信していきたいと考えています。

株式会社 山翠舎
代表取締役社長 山上 浩明さん

株式会社山翠舎
長野県長野市大字大豆島4349-10

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