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株式会社クリエイティブヨーコ

廃棄されていた鹿肉を再利用してペットのおやつに。SDGs活動を支えてきたのは“もったいない“の精神

2023年3月17日

長野市高田で、ペットグッズやキャラクター雑貨の企画・販売を行う株式会社クリエイティブヨーコ。SDGsという言葉が生まれる以前から、地域・社会貢献の取組を続けてきました。近年では製品企画の中にSDGsの考え方を取り入れ、廃棄されてきた地域資源を活⽤した商品開発に力を入れています。そうした商品の企画を行う商品部部長の北原 武幸(きたはら たけゆき)さんと、SDGs活動の発起人である人事総務課 課長の安平 朝子(やすひら ともこ)さんに、具体的な取組の内容や背景、今後の展望について伺います。
*以下敬称略

根底にあるのは「もったいない」という気持ち

2004年から社会貢献の取組を始めたと伺いました。そのきっかけを教えてください。

安平:最初のきっかけは、2004年に起きたスマトラ沖地震です。新聞やテレビのニュースを見て心を痛めた当時の社長が何かできないかと考え、販売する予定だった子ども向け毛布7200枚を急遽スリランカ大使館に寄付しました。このときの社長の決断が起点になり、社内の社会貢献への機運が高まっていきました。

当社では「ロハス」という言葉が会社理念にもなっていますし、もともと地球環境や健康といった分野に関心が強い社員は多かったのだと思います。2005年には社内で「E-PROJECT」という有志10名ほどのチームが立ち上がり、児童養護施設への寄付や清掃活動、盲導犬支援などの活動を進めていくようになりました。

安平朝子さん

社会貢献活動を当たり前にされている中で、「SDGs」という言葉を意識しはじめたのはいつ頃ですか?

安平:2018年ですね。まだまだ言葉自体が浸透していない頃でしたが、新聞やニュースで見かけたのがきっかけで、SDGsに絡めて活動をアピールしていくのはどうかと、私から社長に提案しました。先ほど申し上げたように、SDGsに繋がるような活動はすでにたくさん行っていましたが、この活動が周囲にはあまり知られてない状況を「もったいない」と思うようになったんです。

人事として採用を担当するなかでも、SDGs活動に対する学生の関心が年々高まっていることを感じていたので、きちんと世の中に出していくべきだなと。かと言って、大々的にアピールしすぎるのも私たちの社風には合わないですし、実体が伴っていないようでは意味がないので、身の丈に合った取組と発信をしていくことにしました。

廃棄されていた地域資源を再利用したものづくりを

現在はどのように取組を進めているのでしょうか。

安平:以前は「E-PROJECT」の有志メンバーが独自で進めていましたが、現在は「イベントプランナー」という役割に引き継ぎました。社内会議や行事を司りながら、社会貢献へのアクションに取り組むチームで、セクションや年齢関係なく毎年10名の社員が選出されます。その年のリーダーが翌年のメンバーを決定するという仕組みです。

一年で交代するので社員全員にチャンスがありますし、他のセクションのメンバー同士で交流が生まれたり、それぞれの特技を知ることができたり、社員たちも楽しみながらやっていますね。

北原:実は映像制作ができるメンバーがいたりとか、普段は管理系の業務をしている社員の音楽のセンスが良かったりとか、社員同士の意外な一面を知れるのは面白いですよね。

イベントプランナーの仕事自体が、社員の働きがいにも繋がっていそうですね。では、最近力を入れている取組について教えてください。

北原:今特に力を入れているのは、地元食材や地域資源を活⽤した商品開発ですね。イベントプランナーでは、引き続き盲導犬・聴導犬の支援や、長野市内の児童養護施設にクリスマスプレゼントを贈る取組を中心に行っていますが、それとは別に、私が所属する企画部でも、商品企画を通じたSDGsの取組を行っています。最近では、信州産の鹿肉を使ったジビエのペットおやつを開発しました。

ジビエのペットおやつ

なぜジビエのペットおやつに取り組もうと思ったのでしょうか?

北原:当社はものづくりの事業を行っているので、商品の中にもSDGsの考え方を取り入れていかなければならないと考えて、企画部内でアイデアを出し合いました。その筆頭商品として生まれたのが、このジビエのペットおやつです。

ここ数年、長野でも鹿などの害獣被害が深刻だと言われています。駆除された鹿の一部はジビエ料理を扱うお店などで使われますが、あばら骨やレバーなどどうしても捨てられてしまう部分が出るそうなんです。それらを使って何かできないかと考えた結果、ペットのおやつに活用させてもらうことにしました。

本来であれば廃棄されていたものを再利用して販売しているのですね。

北原:はい。同じシリーズで販売している信州鷄のジャーキーも、卵を産まなくなって廃棄されてしまう親鶏の肉を再利用してジャーキーにしています。通常捨てられてしまうものはコスト面でも安価で手に入るため、良いものをより安くお客様にお届けできるのがメリットだと思います。ちなみにパッケージの印刷にもこだわり、植物由来の資源でできたバイオマスインキを使っています。

当社では他にもペットグッズを多くつくっていますが、ペットウエアの生地にリサイクルの糸を使用したり、竹害と言われるほど増殖している竹の繊維を樹脂に固めてエサ皿に活用したりと、できるところから少しずつ取り組んでいるような段階ですね。

北原武幸さん

SDGsの17の目標でいうと、特に12番の「つくる責任、つかう責任」の部分に当てはまりますね。

北原:はい。それに加え、ペットグッズの廃棄ロスの削減にも取り組んでいます。作りすぎないことを前提に、もし残ってしまった場合はセールで売り切ったり、都内の公園でドッグイベントを開催しているNPO団体や日本聴導犬協会などに寄付しています。イベント内のバザーで売ってもらって出た売上は、公園の管理費に使われるので、間接的に自然を守ることに貢献できるんですよね。

安平:これらも、捨てるのはもったいないという純粋な思いから始まりましたよね。SDGsアクションに取り組み始めたのも、活動が知られていないのはもったいないと感じたからですし、そういった感覚が取組を推進していく力になっていると思います。

ジレンマを感じつつも、採用の現場では手応えも

こうした取組を進める中で、見えてきた課題などはありますか?

北原:コストの面は、一つ課題に感じています。環境への配慮として、商品に使われる梱包材を見直したり、緩衝材を発泡スチロールから紙製品に変えたりしているのですが、今はそういった素材が高騰しているため、使用することでコストが上がってしまうんです。

安平:本当は環境に配慮したものへの切り替えをどんどん進めていきたいけれど、そのせいで商品の価格を上げるのはどうなのか、という難しさとジレンマがありますね。

やりたいけれどやれない、という状況なのですね。

北原:そうですね。ものづくりを事業にしている以上、そういったジレンマを感じる瞬間はたくさんあって、リサイクルで加工して新たなものに作り替える際に、結局多くのエネルギーを使用してしまっているというのも同じですよね。

もちろんリサイクル活動そのものは大切ですが、私たちとしてはできるだけエネルギー使用量を減らし、鹿肉のジャーキーの例のように、廃棄されていたものの新たな活用方法を見つけるところに目を向けていきたいと考えています。

北原武幸さん(左)、安平朝子さん(右)

では反対に、何か手応えを感じていることがあれば教えてください。

安平:ジビエ商品の発売後は、メディア取材や出演の依頼がありましたね。ラジオに出演したり、いくつかの新聞にも取り上げていただきました。当社らしい取組として、わかりやすい事例をつくることができたと思います。

また、採用の現場においても手応えを感じています。就職説明会で学生の皆さんにSDGsに関する取組の話をするととてもリアクションが良くて、説明会の一つの山場になるんですよ(笑)。「こんなこともやっていたんですね」って。2018年に取組を始めた頃から、SDGsへの意識が高い学生の皆さんに関心を持ってもらうきっかけになれば、と考えていたので、その効果を実感できている状況です。

社員の働きがいと、女性管理職比率の向上を目指す

では、今後の展望についてお伺いしたいのですが、現時点で何か検討している取組などはありますか?

安平:人事の立場で言いますと、社員の理想的な働き方を実現する取組にも力を入れていきたいと考えています。SDGsというと、環境保全や社会貢献の項目に注目が集まりがちですが、同時に人権や働きやすさ、女性活躍といった項目にもきちんと目を向けていくべきだと感じています。社員には仕事内容、制度、働く環境などさまざまな面で満足している状態で楽しく働いてほしいので、そうした環境や制度づくりは推し進めていきたいです。

SDGsアクションを始めてから、すでに運用されている新しい制度などはありますか?

安平:今年は、在宅勤務の拡大に取り組みました。当社ではコロナ禍以前から、要件をクリアした一部の社員に在宅勤務を許可していたのですが、今年は一気に拡大して、ほぼ全員が在宅勤務できるようにインターネットの設定などを含めた環境を整備しました。

特定の人だけが得するようなシステムではなく、どんな社員も公平に利用できるような仕組みづくりが必要だと感じています。今は、毎年全社員に実施している働き方に関するアンケートで、意見が多かったものを少しずつ取り入れていますね。

ゆくゆくはフレックスタイム制や連続休暇制度もつくりたいですし、子育て中や療養中、介護中の社員への支援にも取り組んでいけたらと考えています。

安平朝子さん

働きやすい環境の整備によって、社員の皆さんのパフォーマンス向上し、会社の成長に繋がる事例もたくさんありますからね。

北原:同時に、女性の管理職比率も上げていきたいですね。当社は女性社員が7割程度で、私の所属する企画部もペット部門は24名中男性は3名だけ。女性が圧倒的に多いにも関わらず、管理職はまだまだ男性が多いというのが現状なんです。

安平:2030年度末までに女性管理職比率を30%以上にすることを目標に掲げています。ただ、能力はあるのに女性たち自身が管理職に上がることを望まないケースも多いのが課題です。大変そうというイメージがあり、特に子育てをしていると、時間や責任などの面で負担が増えるのは避けたいと。

北原:そのためには制度の整備に加えて、管理職の仕事をもう少しオープンにしていく必要があるかもしれませんね。同時にその仕事内容自体もスマートに改善していきつつ、どんな仕事をしているのかが可視化されることで、社員の意識も少し変わっていくのではないかなと考えています。

「私にもできそう」と思えるきっかけが必要なのかもしれませんね。

安平:そうですね。そこから若い社員たちが「こういうふうになりたい」と思えるロールモデルのような存在が社内に増えていくと、また良い循環が生まれると思うので、まずは一歩ずつ社内環境の整備を進めていきたいですね。

株式会社クリエイティブヨーコ
長野市高田にて、昭和56年に創業。ペットグッズや、動物をモチーフにした生活雑貨、キャラクター雑貨の企画販売を行う。本社以外にも東京オフィスや、全国に80店舗の直営店、ECショップを持つほか、上海や台湾でも実店舗を運営中。創業当時から健康や環境保全、持続可能(サステナブル)な社会生活を心掛けた「ロハス企業」を理念に掲げている。店舗スタッフを含め、女性社員の比率が非常に多い。

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